フェスティバルの趣旨

はじめに

今日でこそ東京湾でのボートシーバスフィッシングはポピュラーになった。考えてみれば、これほどに面白く、スリリング、しかも大都会からさほど離れていない海で、がんがんフッコクラス(40~60cm)を中心にスズキクラス(60cm以上)の魚が釣れるのだから当たり前といえば当たり前なのだが・・・。

1977年10月に千葉港の小峰丸が東京湾で初のスズキ・ルアー乗合船をスタート(当時はまだシーバスと言う単語すらなかった)。それ以来、一時は結構な数の遊漁船が後に続いたが、4年も経たないうちにめっきり釣れなくなってしまった。スズキ・ルアー船ブームは1980年台前半に去り、元祖であった小峰丸、長浦・こなや丸など、ほんの僅かな船宿だけが残った状態となった。

これはとても残念なことであったし、スズキと、この釣りをこよなく愛する仲間たちは“何とかしないと!”といった危機感から、スズキの生態をよく理解した上で、この魚を将来守っていこうと行動を起こすことになった。

それがJapan Game Fish Association(以下:JGFA)が提唱するシーバスへのタグ&リリースであった。そして、このタグ&リリースということと、また、こんなに素晴らしい「ボートからのシーバスフィッシング」をJGFAのボート仲間や、もっと多くのアングラー達とわかちあい、いい形で将来に引き継げるようにしたいという2つの理由から、そのきっかけ作りのためにスタートしたのが「東京ベイ・シーバスゲーム・フェスティバル」であった。1985年10月のことである。

「東京ベイ・シーバスゲーム・フェスティバル」の趣旨

このフェスティバルの趣旨は「東京湾のシーバスをいつまでも釣れる環境にしておきたい。」この一言に尽きる。

ただ、この目的を果たすためには当然、節度ある釣りを心がけなければいけない。そして、前述のように、この釣りの面白さをより多くのアングラーに知ってもらい、一人でも多くの仲間に「シーバスという世界に誇れる類まれなゲームフィッシュ」の大切さを理解してもらう必要があった。

1970年代、東京湾でこの釣りが始まった頃は、それこそ船内がフッコクラスのシーバスでいっぱいになるほど釣れ、その魚のすべてがキープされた。漁業者も巻網船を頻繁に繰り出し、一網打尽に獲りまくった。これで資源が減らないわけがなく、一時はまったく釣れなくなってしまった。

そのてつを二度と踏まないために、我々アングラーだけでも「この魚を極力減らさない釣りを目指そうじゃないか!」ということを伝えたかったし、そうしなければ東京湾のシーバスに未来はないと考えた。シーバスさえ豊富にいてくれれば、どんな楽しみ方でもできるわけだから・・・

だからこのイベントは釣り大会といえども「トーナメント(競技)」ではなく、スズキをこよなく愛するアングラーの祭典という意味で「フェスティバル」と名づけた。

日本初のタグ&リリースイベント

このフェスティバルが始まる直前、JGFAではすでにカジキやシイラへのゲームフィッシュにタグを装着してリリースし、再度捕獲された際に対象魚の移動距離・成長等を把握する計画が当時の水産庁・遠洋水産研究所との協力ではじまっていた。これがタグ&リリースの起源である。

東京湾のシーバスも例外ではなく、釣れなくなった原因を探るためにもスズキの生態を理解しておく必要があった。そのため1985年、Tokyo Bay Seabass Game Festivalの両発起人は水産庁・東海区水産研究所に出向いた。

研究レベルでは、漁獲情報や産卵された卵の分布調査などで、およその行動パターンが東京湾のスズキについて分かっていたが、移動に関する実証データとしては得られていなかった。そこで、研究所との協力でタグの供給を受けることになり、シーバスに対するタグ&リリースを積極的に推奨させるために「東京ベイ・シーバスゲーム・フェスティバル」に組み込んだ。日本で始めてのタグ&リリースイベントがここに誕生したのである。

ボートの仲間とシーバスアングラーの出会い

1985年当時、JGFAのボートオーナーでスズキのルアーフィッシングを経験したことがあるメンバーはほとんどいなかった。そんな中、古山 輝男氏(JGFA常任理事・レッドヘッダーズ代表) 若林 務氏(JGFA事務局長 レッドヘッダーズ所属)と福永 実一氏(同常任理事・横浜ビルフィッシュクラブ代表)がいた。

古山氏と若林氏はいかに船からのシーバスフィッシングが面白いか、しかも、福永氏が住む横浜周辺のコンビナートの海がこの釣りにおいていかに手付かずであるかを説明した。すると、「面白そうじゃないか。ボート仲間を集めるから、どんなポイントを攻め、どんな操船をしたらいいのか講習会をやってくれないか」と話は進み、「ボートからのシーバスフィッシングセミナー」が第1回の「東京ベイシーバスゲームフェスティバル」に先立ち開かれた。

横浜や川崎周辺でのポイントも定かではなく、タギングも初めて。ボートの操船もままならない。パーティ会場も初めて。何から何まで初めて尽くし。しかし、言えることはボート仲間とルアーアングラーの出会いの場があったからこそ、このフェスティバルが生まれた。さらに言い換えれば、JGFAという、ジャンルを超えて釣り人が集まるこの組織がそれを可能にしたとも言えるだろう。

その後、バスフィッシングブームとも重なり、JGFAに所属するレッドヘッダーズ、横浜ビルフィッシュクラブ主催(後援:JGFA)の体制の基、一時期は300名以上を集める大会へと成長した。もちろん当初の趣旨である釣れたシーバスはすべてタグ&リリースそしてバーブレスフックの大会とし、「釣れたスズキは、一尾も殺さない」という方針は世代を越えて受け継がれてきたのである。

それではここで、Tokyo Bay SeaBass Game Festivalの歴史を懐かしい写真と共に振り返ってみたいと思う。

長八で開催されていたころの様子(第7回大会 1991年)
古山 輝男氏
当時の宴会は屋形船で行われていた。
1992年8回大会よりオールタグ&リリースの大会となった。
乗合船での釣行風景。一昔前の灯標の形が懐かしさを感じさせる。
節目の1993年10回大会 レジェンドたちが一堂に集った前夜祭。
発起人、古山さん・福永さんのコンセプトはボートシーバスを愛するメンバーが集う“フェスティバル”
10周年記念大会はあいにくの天候となったが、Good Sizeのシーバスが釣れ好釣果となった。
JGFA初代会長 大西さんのスピーチ
天候に恵まれた13回大会。ストラクチャーを丹念に攻めて釣果を上げる。(ファイトしているのはレッドヘッターズ印南さん)
若かりし頃の古山さん (いやいや、本当に若いっす)
今では超有名人となったこのお二人もチームで参戦されてました。1998年14回大会
1999年15回大会より筆者もスタッフとして本格参戦
生バンドあり、屋台あり、、拘りぬいたフェスティバルの神髄がここにありました。
マイクを握るのは、東京ベイシーバスゲームフェスティバルの名誉会長 福永実一氏
本当に貴重なショットです。
レッドヘッターズ古山氏(左) 横浜ビルフィッシュクラブ福永氏(右) 両実行委員長が登壇!!
表彰式ではこんな豪華な3ショットも!
ポイント目指して一斉スタート スタートシーンは前夜祭とは打って変わって真剣そのものです。

素晴らしいゲームフィッシュであるシーバスを対象に、東京湾最大規模のボートシーバスフィッシング・イベントを運営し、「いい釣りをいつまでも」に貢献できたらこれほど嬉しいことはない。Tight Line!

フェスティバル当日に使用するアンカー式スパゲッティタグ(1チームにつき25本持参のこと)及びタグガンは必ず

各チームでご手配ください。

所有していないチームは、JGFA事務局(03-6280-3950)に申し出て、事前に入手してください。JGFAより郵送されます。

文 関根英介